医師 横 倉 基
脳卒中や神経難病の患者さんのなかには、自分の口から食べられない人、食べたものが肺のなかにすぐ入ってしまい肺炎を繰り返す人がいます。そのような患者さんに対して行われている栄養法の一つが胃瘻です。お腹から胃に穴を開けそこから栄養剤を入れる方法で最近急速に普及している経腸栄養法です。
いままでは、1太い静脈から点滴をする(IVH)、2鼻からチューブを胃や12指腸に入れてそこから栄養剤を注入する(経鼻経管栄養法)などの方法がとられていました。
1の点滴ですが、頸や鎖骨の下の太い静脈から細い管を心臓近くまで挿入し、高カロリーの点滴が可能になりました。胃腸の病気のため消化吸収ができない患者さんにとっては命綱です。しかし、感染症や血栓症などの合併症の危険があり、ご家族などが点滴の管の操作を行うことはできないなどの欠点があります。
2の経鼻経管栄養法ですが、自分の胃や腸などの消化管にとくに問題のない人にとってそれを使うことが人間の生理にかなっています。また、1と違ってご家族にもできる手技のために在宅療養を望まれる方にはよい方法でしょう。しかし、鼻にチューブが入っている違和感や、自分でチューブを引き抜いてしまう自己抜去などのトラブル、チューブを伝わって口のなかの唾液が気管の中に入り込み肺炎になりやすいなどの欠点があります。
胃瘻について説明します。腹壁と胃を密着させてそこに孔をあけ、その孔にチューブを入れます。そのチューブを通して栄養剤を直接胃のなかに入れます。この過程を胃カメラの補助下で行います。胃瘻造設は通常の胃カメラを行う内視鏡室で行い、所要時間は20〜30分程度の小手術です。食べ物を飲み込む体の一部分の機能(嚥下)は衰えているが、その下の消化管が正常の人はその胃腸を使うべきであるし、胃腸を使うほうが免疫機能も高まるというのが一般的な理解になっています。
稜北病院でも胃瘻造設を数年前から始めています。私は稜北病院のような中規模の病院こそが胃瘻の造設や管理に関して望ましいのではないかと思っています。なぜ嚥下障害になったのか、リハビリで改善できないか、患者さんや家族は本当に納得しているか、介護者はうまく経管栄養の手技を習得できるか、造設後の管理をどの病院がするのか、そういう全体の流れのすべてに関われるほうが良いと私は思っています。
大規模病院では専門分化しすぎて全体像を把握することは困難です。しかし、稜北病院は、中規模ながら急性期の病棟、療養型の病棟、リハビリ、在宅部門があります。嚥下障害という困難を抱えた患者さんに対して、何とかちゃんと栄養をとって寿命を全うしてほしいという気持ちで一致できれば、縄張り意識なく有機的に結合することが、規模的にも人的にも可能であると私は思います。その意味で、稜北病院の力量が試されるテーマであると思います。