新しい時代の新しい子育て

小児科医 高柳滋治

 子どもの健康と発達をめぐる状況が変化しています。衛生環境と栄養状況の改善により、かつて子どもの命にとって脅威だった多くの感染症が減少し、かつ軽症化してきました。一方で、アレルギーなどの慢性疾患、肥満・高脂血症などの成人病の予備軍、ストレスによる体の変調、肩こり、不眠、疲れやすい、意欲の低下などの不健康な子どもたちの増加、親の育児不安のたかまりなどが問題になってきています。これまでの病気に対する治療的なアプローチだけでは、子どもたちの健康や豊かな発達を保証していくことが困難になってきています。

今、親たちはとても熱心です。懇談会やPTAの研修会に呼ばれていくと、病気の話よりも「子育て」に関する話の時に、大勢の親が集まります。もっと豊かに子どもを育てたいという願いが、前面に出てきていることの表れです。また、子どもを取り巻く教員・保母・保健師などの専門職、様々な市民団体が、様々な活動を展開しています。今、みんなが「豊かな時代の豊かな子育てのありかた」を模索しているところです。
私たちは、子どもたちにどんなふうに育ってもらいたいと思っているのでしょうか?「一人一人が自分の能力に応じて働き、お互いに補い合い協力しあいながら富を作りだし、それを分かち合って豊かに暮らしていく」「お互いを一個の人格として、それぞれの違いを認め合いながら、協力できるところで協力する」、そんな『協力協働の人間関係』を小さいときから子どもたちに学んでもらいたいと思います。『協力協働の人間関係』を支えていくものは、「人々は私の仲間だ」という他者への信頼と「私は人に貢献する能力がある」という自分への信頼です。 そのために必要なのは、「ともにあそぶこと」と「ともにはたらくこと」です。
かつて、地域には異年齢の遊び集団があり、子どもたちはその中で団子になって遊んでいました。大人のいない中で、自分たちの欲求をぶつけあい、時にはけんかし、仲直りし、協力して遊びを作り上げてきました。自分の要求を正当に主張する能力、相手の要求を受け止める力、妥協点を見いだす技術、集団で物事に取り組むことの豊かさを実感しながら育っていきました。

また、家の中に子どもたちの仕事がたくさんありました。今のように、家事が電化されていなかった時代には、子どもたちが否応なしに働かざるをえませんでした。「あらかじめ段取りを立て、実際に手と体を動かしながら手順通り進め、失敗したときに次の工夫を考える」「うまく行ったことが自信になり、前向きに取り組む力になる」~家の仕事をする中で”生きる力”が培われていきました。また、家族の中に自分が担うべき仕事を持つことで、子どもたちは自分の存在感をえることができ、日々の生活の中で、「他者に貢献する」という生きることの意味を実感することができていました。

「子どもたちとともにあそび、子どもたちとともにはたらく」~そんなに難しいことではありません。このことをキーワードに、地域に豊かな子育てのネットワークを作りだし、親や子どもを取り巻く様々な人たちと豊かな地域作りをしていきたいと願っています。

投稿者: 道南勤医協 | 登録日: 2008年11月1日

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