病院の言葉をわかりやすく

医師 堀口 信

 病院や診療所に足を運んだとき、医療関係者の話す言葉、医師の診断書やカルテの内容が理解できず、悩んだ経験は、どなたも一度ならずあると思います。

 国立国語研究所の2004年調査では、8割をこえる国民は、医師が患者に話す言葉の中に、わかりやすく言い換えたり、説明を加えたりしてほしい言葉があると回答しています。
 この事実をふまえて、国語研究所は、医療関係者と一般市民を対象にした大規模な調査を行って、「病院の言葉をわかりやすくする提案」をまとめました。 くわしくは、国語研究所のホームページに掲載されていますので、興味のある方はぜひご覧ください( http://www.kokken.go.jp/byoin/ )。

患者さんに言葉が伝わらない三つの原因

 今回の調査結果によると、病院の言葉が伝わらない原因は大きく三つあります。
 第一の原因は、そもそも言葉が知られていないことです。
 イレウス(腸閉塞のこと)のようなカタカナ言葉は医療関係者の口から良く出る言葉です。しかし、一般市民の中でこういった言葉を「聞いたことがない」人は、イレウスで87.5%もいます(表を参照)。


一般市民で「知っている」人が少ない言葉


言葉

知っている人の率(%)

振戦

6.8 

イレウス

12.5 

寛解

13.9 

せん妄

24.7 

プライマリケア

29.6 

虚血性心疾患

42.3 

生検

43.1 


 
 こういった言葉で医師が話しても通じないのは当然なわけです。

 言葉が伝わらない第二の原因は、きいたことはあるが、正しく理解されていない場合です。
  たとえば「ショック」という言葉は94.4%の人はきいたことがあります。しかし正しく理解している人は43.4%にとどまっています。「ショック」とは、血圧が下がり、生命の危険がある状態を意味します。しかし、多くの方は「急な刺激をうけた状態」とか「びっくりした状態」と、誤ってうけとめています。このような誤解が医療関係者と患者さん・ご家族との間にあること自体、「ショック」なことです。

  言葉が伝わらない第三の原因は、言葉を理解することへの心理的抵抗です。
  その代表例は「腫瘍(しゅよう)」です。人によっては腫瘍=がんと思い込んで落ち込むこともあります。腫瘍には良性と悪性があり、「細胞が異常にふえて固まりになったもの」をさします。簡単にいうと「できもの」のことです。

言葉の行き違いで信頼関係が損なわれる

 言葉が誤解されて、医師と患者との信頼関係が損なわれることもあります。
  たとえば「合併症」という言葉です。医学的には「ある病気が原因でおこる別の病気(たとえば、糖尿病に合併する動脈硬化症)」または「ある治療や検査が原因でおこる別の病気(たとえば、消化器の手術後におこる腸閉塞)」を意味します。しかし、合併症を、治療や検査中におこる医療ミスと誤解される場合があります。このような誤解がおこると、医師と患者との信頼関係が大きく損なわれることになります。

病院の言葉をわかりやすくするために

 まず大切なのは、医療関係者も患者さんも、病院の言葉がわかりにくい(わかっていない)ことを、ともに理解することです。
  医療関係者も、言い方をわかりやすくしたり、紙に書いたりと、わかりやすくなる工夫をしていると思います。それでも、わからないときは、「わからないので、もっとくわしく」と患者さんに言っていただけることが大事です。

投稿者: 道南勤医協 | 登録日: 2009年5月1日

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