健康あらかると 新型インフルエンザ ~予防と対策~

医師 高桑良平
(勤医協中央病院副院長、勤医協中央病院院内感染対策員会委員長)

今月の「健康あらかると」は、北海道民医連新聞(10月8日付)に掲載された高桑良平医師の原稿を転載しました。高桑良平医師は勤医協中央病院副院長で、勤医協中央病院院内感染対策員会委員長も務めています。10月号の続き「ウォーキングを楽しむために2」は、12月号で掲載します。
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 新型インフルエンザ感染者が急増しています。WHOにたいし世界191の国と地域から30万例を超える感染例と3917例の死亡者が報告されています(9月20日現在)。厚生労働省は、国内では新型インフルエンザの流行が10月中に第一波のピークをむかえ、国民の5人に1人(2500万人)が感染すると予測しています。その後一旦落ち着き、年末から例年の季節性インフルエンザ流行期にもう一度感染が拡大すると予想しています。感染症学会では、冬のインフルエンザのほとんどが「新型」になると予想しています。

感染経路

 感染経路は飛沫感染が主です。発熱やせき症状が出る1日前から他人に感染させる可能性があり、症状が出てから対応しても遅いという問題があります。飛沫だけでなく粘膜を介しても伝染しますから、子どもの鼻水をぬぐったタオルに触れたり、コップを共用しないことが必要です。
 新型インフルエンザの流行以前は、厚労省や米国疾病予防管理センター(CDC)は「空気感染同様の注意を」と言っていました。空気感染の対策をしている病院は少なく、パニックにならないよう現在は「空気感染」をあまり言わないのだと思います。

症状

 症状は発熱、咳、熱感、悪寒、咽頭痛など、ふつうの風邪症状と区別がつきません。季節性インフルエンザの死亡率は0.1%以下ですが、新型ではWHOの予想で0.45%程度となっています。肺炎をおこす確率も季節性より高く、健康な小児や成人でも最初は軽症なのに5~6日後からウイルス性肺炎を併発し、急激に重症化することがあるので注意が必要です。

ワクチン

 ワクチンは発病の予防ではなく「重症化の予防」のために接種します。1歳以上の人はワクチン接種を受けるべきですが、数が足りません。政府は1日にワクチンの接種方針を正式決定し、最優先となった医療従事者への接種を19日にも始め、持病のある人や妊婦らは11月以降に順次開始するとしています。
 今回、季節性インフルエンザワクチンはどうしたらいいのかと悩まれると思いますが、季節性のB型は毎年春先に流行しますので、これを防ぐために季節性のワクチンも必要です。特にリスクがある人は、これを外すということにはならないでしょう。

予防

 予防の基本は十分な睡眠と適度な栄養、基礎的な体力を維持することです。マスクの着用については、エビデンスがないので欧米ではあまり評価されていないのですが、WHOも日本感染症学会も着用を推奨しています。飛沫感染の防止のためには最大の武器です。マスクをしていると何気なく鼻や口に触る行動を防ぎます。粘膜からの感染と飛沫感染防止には有用で、私は一番大事なことだと思います。
 ハイタッチ・サーフェス(ドアノブや手すりなど、不特定多数の人が手を触れる表面)はアルコールで拭いて消毒します。手洗いも基本です。家庭では手拭いからの感染に気をつけましょう。うがいはエビデンスがありませんが無駄とは言えません。ただしコップを共用するのは逆効果です。

治療

 タミフルの使用については賛否両論あります。日本ではインフルエンザにかかった人の死亡率が0.01%以下と非常に低いのは、タミフルが9割がた投与されていることと、早期に受診していることが理由にあげられます。
日本小児科学会や日本感染症学会が全ての国民に発症早期のタミフル内服を推奨していますが、腎機能障害のある人には減量が必要なことや、10代に投与するときには異常行動を監視するなどの注意を払うなど、十分な説明と同意が必要です。インフルエンザの症状が出たらマスクを着け、早めに受診しましょう。

投稿者: 道南勤医協 | 登録日: 2009年11月1日

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