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健康あらかると 「在宅療養患者の栄養実態調査より」
医師 鎌倉 嘉一郎
稜北内科小児科クリニックより定期訪問診療させていただいている患者さんの栄養状態について稜北病院NST(栄養サポートチーム委員会)と在宅医療部が調査を行いました。対象は2009年12月に登録されていた87名中70名(男性20名女性50名、平均年齢81.8歳)。要介護度は要介護4(11名)と要介護5(13名)で全体の3分の1以上、日常生活自立度は寝たきり状態B(26名)と寝たきり状態C(15名)が全体の半数以上を占めていました。
=4人に1人は低体重=
高齢者は少し太り気味のほうが長寿といわれています。痩せている人はすべての原因による死亡率が太っている人と比べて4倍近く増加との報告があります。本調査では低体重(BMI18.5未満)が17名(24%)で約4人に1人でした。肥満2度(BMI30以上3未満)の方は2名でした。
=低栄養の危険性=
「アルブミン」は内臓たんぱく質を反映します。食事摂取量が多少減ってもアルブミンは簡単には下がらないものですが、軽度低下が12%、高度低下が3%認められました。「総リンパ球数」は細胞性免疫を反映します。これも軽度低下が13%、高度低下が7%認められました。
筋肉や皮下脂肪量の低下に関する視診でも「大腿四頭筋筋肉量」軽度低下が54%、高度低下が15%。「上腕三頭筋部=二の腕の皮下脂肪厚」軽度低下が35%、高度低下が5%認められました。
その他の調査項目についても8から42%で低下を認めました。
在宅療養患者の栄養実態調査より
=アンケートより=
介護者へのアンケートでは「家族からみて栄養問題あり16%」、「在宅療養をはじめてから体重が減っている16%」、「食事回数が1日2回以下21%」、「野菜や乳製品が少ない16%」、「入れ歯不適合または使用せず32%」、「食事介助が必要25%」。「食欲がない」、「食事量が減った」、「バランスが悪い」、「食べないのでどうしたらよいか悩む」などの声も寄せられました。反対に「体重増加が心配」という方もいました。
=要介護者は低栄養リスクに注意必要=
日常生活自立度が低いほどアルブミン値が低いことが示されています。その他の指標についても同様な傾向を認めました。
体重(BMI)や「主観的包括的栄養評価スクリーニングSGA」とアルブミンとの相関などから、低栄養スクリーニング法としてこれらが妥当であることもわかりました。
今後、低栄養の早期発見と対応の強化をすすめます。調査に協力いただきました患者さん、ご家族にお礼申し上げます。
投稿者: 道南勤医協 | 登録日: 2010年4月1日