健康あらかると 「昨今の往診事情」

医師 横倉 基

 昔から道南勤医協の各院所では往診をしていました。しかし、以前の稜北病院は、往診医療に積極的ではありませんでした。患者さんや家族から頼まれた医師が、外来診療や検査の空き時間に細々と往診をしていたのが実情です。その数も20人未満でした。しかし2007年に稜北病院の往診医療は一変しました。

 稜北病院の外来部門のクリニックが24時間在宅療養支援診療所の届け出を行い、往診医療を道南勤医協の柱の一つに位置付けたのです。これには理由があります。昔から稜北病院に通院していた患者さんが、私たちの知らないうちに他の病院に入院されて亡くなられました。このような残念な知らせが数回続いたのです。稜北病院を信頼して通院していた患者さんが、病気が重くなり足腰が弱り通院できなくなった時、病院として支援する力が足りなかったのです。そのことを深く反省し、もっと在宅医療を進めていこうと決めました。

新たに在宅医療部という仕組みをつくり、多くの医師や看護師が往診医療に参加するようになりました。高齢になり足腰が弱って通院困難な患者さんには、私たちのほうから積極的に往診を提案するようにしました。

 この頃、国の制度(24時間在宅療養支援療所)も在宅医療を促進する役割をはたしました。(入院ベッドを少なくして医療費を削減したいという国の思惑はありますが)また、日本の各地域で往診が見直されるようになりました。大都市では往診専門の診療所ができ、診察室の椅子に座っていた医師が、自転車や自動車に乗って患者さんの家へ行きます。自宅で最期を迎えたいと希望する患者さんにはその支えになります。厚労省で発表する人口統計で、減少の一途をたどっていた在宅で亡くなられる人の数が、この頃を境に増えだしました。昔の往診は、町医者の先生が家族から依頼されて臨時に家に行くスタイルでした。できる医療行為は限られていたかもしれません。しかし、かかりつけ医の往診で患者さんや家族は安心されたことでしょう。

 現在の往診はちょっと趣が違います。正式には、「訪問診療」と言います。何らかの事情で病院に通院できない患者さんに対して、医師や看護師が定期的に家へうかがいます。定期的に行くことが違うところです。ただし、臨時に行くこともあります。また、いろいろな職種とチームを組んで行うところも違います。看護師が行く訪問看護、ヘルパーさんが行く訪問介護、リハビリ技師が行く訪問リハビリなどです。これらの人たちと往診の医師や看護師が皆でチームを組んで、患者さんの在宅医療を支えていこうとしています。このようにして稜北病院の往診の患者さんの数は、90人くらいに増えました。そのほとんどが、24時間在宅療養支援診療所対象の患者さんで、月2回自宅へうかがい、臨時に往診する契約を結んでいます。函館診療所は以前から往診に積極的で、現在は40人くらいの往診患者さんがいます。

 昨年度、私たちのチームは、自宅で最期を迎えたいと意思表示された患者さんの何人かを、家族と一緒に支え、その願いを叶えるお手伝いをしました。病院で亡くなることが一般的な現代にあって、自宅で最期を迎えるということは、ものすごく勇気のいる決断です。患者さんと支える家族の深い心のつながりが無くては出来ないことであり、それまでの家族関係が凝縮されているように感じます。患者さんの人生に深く寄り添うことができる在宅医療を私たちは目指しています。

投稿者: 道南勤医協 | 登録日: 2010年7月1日

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