健康あらかると 「膝の痛みに健康食品(サプリメント)は効果がありますか?」

函館稜北病院院長 整形外科医師  及能義広
高齢化社会となり、膝の痛みを訴える人が多くなっています。その原因の多くは変形性膝関節症といって膝関節の表面を覆うクッションの働きを行う軟骨が年齢とともに傷つき擦り減ることから起こります。それに対して膝の痛みを改善するという各種サプリメントの広告が、新聞・雑誌・テレビに数多く見られます。代表的なのがグルコサミンおよびコンドロイチンで、これらは実際に動物の軟骨に含まれる糖やアミノ酸の一種で、軟骨成分として必要なものであり、加齢とともに減少していきます。ですからこれらの物質を補給すれば良いように思えます。これらの成分を含む食品を口から補給すると本当に膝軟骨が修復または再生され、痛みが改善するかどうかよく聞かれますので私の考えを述べます。 実は変形性膝関節症への効果の報告は研究者によって大きく異なっています。ある薬または食品を使用して痛みや機能が改善したという人の声を何十、何百と集めてきても本当に効果があったという科学的証明にはなりません。その理由として、効果がない、または逆に悪化した人がいてもその数が反映されない可能性もありますし、自然に治癒した場合や他の治療(例えば運動を毎日欠かさず行って太ももの筋肉を強化している、体重が増えないように食事に気を付けている)を併用したために症状が改善した場合もあります。またプラセボ効果と言って偽薬(ニセ薬たとえば乳糖など)を与えられた時でも心理的効果によって痛みが改善するということがよくあり、これらの要素を完全に排除しなければ科学的に効果が証明されたとはいえません。実際には二重盲検法あるいは無作為化比較試験といって年齢や性別、生活環境等があまり変わらない二つの集団に対して本物の薬か偽薬か、患者と医師(または研究者)の両者ともにどちらかわからないようにして投与して効果の差を見る方法が有効と言われています。昔は効果があったという報告が多かったのですが(食品または医薬品会社が資金提供した試験は特にその傾向が強いといわれます)、最近の海外での厳密な方法で行われた大規模な試験では偽薬と比べて特に改善が見られなかったという報告が多くなされています。(1例として世界で最も信頼性があるといわれるコクラン・レビューでは現時点でグルコサミン治療は偽薬に比較して疼痛改善、機能改善の点で差が無いと結論しています。) またヒアルロン酸は前二者と同様軟骨に多く存在し、現在医療機関で膝や肩に関節内注射することで痛みや機能改善に効果があると認められている薬です。しかし口から飲むことで効果があるのかどうかははっきりしていません。グルコサミンおよびコンドロイチンも同様なのですが、口から飲んでも胃や腸で成分が消化・分解されてしまい、軟骨に血中で運ばれたとしても、もとの成分の状態で軟骨に補給されるとはまず考えられません。実際、グルコサミンは消化・吸収されると糖になりますので血糖値、血中コレステロール値が上昇する可能性があるといわれています。 結論としてはこれらの健康食品の効果は疑問で、どちらかというと明確な効果があるとは現時点では言えません。ただし海外における厳密な試験で近い将来その結論が出るものと思われます。

投稿者: 道南勤医協 | 登録日: 2011年6月1日

▲このページの先頭へ

© 医療法人 道南勤労者医療協会