健康あらかると

江差診療所所長 大城  忠
在宅医療と家族の健康 「家にいたいという本人の希望に応えたい」これは多くの家族の思いです。しかし、結局家での介護を断念することがあります。その大きな理由のひとつが介護する家族の心身の疲労・健康の悪化です。介護を担う妻やその家族からは「がんばるしかない・仕方ない」悲壮な言葉が出てきます。介護は大切な行いですが、その負担は新たな障害を生み出すことがあります。  数年前、障害を持つ患者さんを2週間に1回の訪問診療で援助していたことがありました。高齢の家族が寝たきりの患者さんを介護し、その人たちなりに笑顔で暮らしていました。ある時、気がつくと介護する家族が痩せてきているようでした。「私は大丈夫。」という家族を説得して検査を受けてもらいました。すでに病気は進行していました。診断確定後、短期間で介護する家族は亡くなり、患者さんの在宅療養も終わりました。患者さんは遠い地域の施設に移りました。訪問診療の主治医としてもっと早く介護する家族にもしっかりした健康管理を勧めていればと後悔しました。介護する人・される人、両方の健康管理が必要なのです。 介護者の健康状態  ある調査で、介護する家族から、体が疲れる(56.6%)、自分の自由になる時間がない(51.3%)、睡眠不足になりがち(50.8%)、この先の不安感がいつもある(40.8%)、気持ちがふさぎこみがち(30.7%)などのつらい自覚症状が報告されています。  負担の原因の多くはこれまでの生活が大きく変化し、すべてが介護される人中心になっていくことにあります。排便、排尿の処置、発熱の処置、胃ろうの管理、痰の吸引など不慣れな医療・介護の手技も大変です。食べてくれない。言うこと聞かない。あれもこれも思い通りになりません。「何もしなくても良い、出かけなさい」と言われても気になり、精神的、肉体的に縛られます。  介護される人の病気や障害の状態によっても異なります。認知症の場合、精一杯努力しても報われるように感じられないことがあります。癌患者さんの介護では苦痛を目の前にして何も出来ないつらさ、不安を感じます。すべてのことがストレスになり心身の健康を悪化させます。 「がんばらない介護」をめざしましょう  私たちは働く人の健康破壊とそれを防ぐ医療について学んできました。長時間・過密労働がストレスとなり、脳卒中や心筋梗塞の原因になることがわかりました。家族介護の場合も同じように考えることが必要です。まず介護者の健康管理をしっかり行いましょう。医師も介護する家族に全身的な検査をしっかり受けてもらい、前記の患者さんのような痛ましい例を生み出さないようにしたいと考えています。  「がんばらない介護」という姿勢と具体化が必要です。ある経験者は次のようなポイントをあげました。①一人で介護を背負い込まない:家族や知人誰にでも頼りましょう。弱音を吐くことが大切です。②積極的にサービスを利用する:介護する家族が趣味を続け、友人たちとのんびりする時間が必要です。ヘルパーさん、デイケア・デイサービス、ショートステイなどの介護サービスを積極的に利用しましょう。ケアマネージャーさんはそのためにいます。③現状を認識し、受容しましょう:介護される人は高齢で、考え方、身体能力は変わらないことが多いものです。「言うこと聞かない」と思うと疲れます。「それが自然」と考えましょう。④できるだけ楽な介護を考えること:私の故郷沖縄に「テーゲー」という言葉があります。「ほどほどに」ということです。 以上、なかなか難しいと思いますが、「ほどほどに長く続く介護」をめざしてもらいたいものです。

投稿者: 道南勤医協 | 登録日: 2011年8月1日

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