健康あらかると「たかが風邪薬、されど風邪薬」 ~抗ヒスタミン薬の注意点~

薬剤師 多田勘司

 風邪薬を飲んだ高速バスの運転手さんが、運転中に突然意識もうろう状態に陥った2008年山形県での事故を覚えていますか?この事故でわかったことは、風邪薬に含まれる鼻水を抑える成分が、たとえ眠気を感じなくても、蛇行運転する可能性があり、非常に危険であること。当時、ニュースでさわがれ、バス会社やタクシー会社などが、風邪薬服用の基準を作ったほどでした。

 風邪薬や花粉症の薬の中で鼻炎、鼻水の薬の副作用と聞いてすぐ思い浮かぶのは「眠気」だと思います。これらの薬は「抗ヒスタミン剤」と呼び、副作用として特に「眠気」が多いと言われています。抗ヒスタミン剤を飲んだら、「自動車の運転をさけるように」、と注意書きにも記載してあります。処方箋でもらう薬だけでなく、大抵の市販の『風邪薬』にも、抗ヒスタミン剤が含まれています。これらの薬であまり知られていないことは「眠気」がなくても、「集中力・判断力・作業能率が低くなる状態がおこる」ことです。この事を、「インペアード・パフォーマンス(impaired performance)」と呼びます。

 この集中力・判断力などが低下することは、日常生活の仕事、学業、家事に大きな影響を与えるという点で十分に注意すべき事です。実は抗ヒスタミン剤を飲むと、「グラス4杯分のウイスキー」を飲んだのに相当するほどの能率の低下がある、と指摘する専門家もおり、その影響は私達の想像以上に大きいと考えなければなりません。

 風邪薬を飲んでも全然眠くないって事もあります。でも、無意識に集中力・判断力の低下が起こっていることもあるのです。お酒を飲むと、自分では酔っていないつもりでも思わぬミスをすることがありますよね。アルコールを飲んだ時、抗ヒスタミン剤を飲んだ時、いずれも判断力は遅くなっています。(グラフ1、2)

抗ヒスタミン薬・アルコール-集中力・判断力比較グラフ

 つまり、鼻炎、鼻水の薬(抗ヒスタミン剤)の副作用には、「自覚しやすい眠気」と「自覚しにくい集中力・判断力・作業能率の低下」の2つがあるということです。くれぐれも眠くないから大丈夫だとは思ってはいけません。

 当院で処方される鼻炎、鼻水の薬でもこのようなことが起こる可能性もあります。『眠気』以外の副作用を意識しながら日常生活を送ることで、予期しない事故を防ぐことも可能です。

 まだまだ風邪の季節が続きます。風邪薬だから大丈夫と決めつけず、服用している薬に不安のある方は、薬剤師に相談してください。

投稿者: 道南勤医協 | 登録日: 2012年2月1日

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