「最後まで自分らしく」稜北病院訪問診療の取り組み

 稜北病院は「機能強化型在宅療養支援病院」として、訪問診療に力を入れています。様々な疾患や障害を抱えていても、住み慣れた家で安心して暮すことは、多くの患者さんの願いです。在宅療養の患者さん、家族を支える稜北病院の訪問診療を紹介します。

 家での主人公は患者さんであり、家族です。患者さんはどう生きたいのか、どこでどう最期を迎えたいのか、家族の思いはどうなのか。訪問診療とは、病気だけ、患者さんだけを診るのではなく、ご家族を含めた生活全てを支えていく役割があると強く感じています。
 自宅で看取るということは、本人はもちろんですが、家族の方の不安は大変大きいものです。自宅で看取ると決めても、患者さんに苦痛が出てきた時、気持ちが揺れることもあると思います。「本当にこれで良かったのか」と悩む時もあると思います。私たちスタッフだけではなく、患者さんに関わる全ての人が、チームとなり医療者の垣根を超え、一支援者として何ができるのか、家族と共に考え、悩み、乗り越えてきました。

「家で死にたい」という思いに

 肝臓にがんが見つかった50歳台の男性Aさん。Aさんはあえて治療の選択はしませんでした。通院しているなかで「家で死にたい」という言葉が毎回のように聞かれていましたが、介護に対する家族の不安もあり、訪問診療の導入には至らない状況でした。その中でAさんの意思が固いこともあり、奥さんと面談。「必ず支える」ということを約束し訪問診療、訪問看護を開始しました。
 訪問診療が開始になってからは、とても安心したような表情で過ごされていたことが印象的でした。自宅で看取るためには奥さん一人の力では困難ということもあり、Aさん自らの言葉で「どんなことがあっても家で死にたい」と家族、知人の前で話され、介護に協力していただきました。病状の変化の時だけでなくAさん、ご家族の不安な時にも臨時往診で対応し、最期まで「自分らしく」を貫き、弱音を一切吐くことなく、家族、知人に見守られ息を引き取られました。

「ご苦労様ありがとう」と拍手でお見送り

 90歳台の女性Bさん。主な介護を担っていた娘さんの夫に、いくつかの病気が立て続けに発見され、Bさんの介護、夫の看病の両立は困難と判断した娘さん。Bさんを老人保健施設に入所させるという選択をしましたが、入所後の検査で大腸に複数のがん、転移も見つかり、余命わずかということから、娘さんは自宅での看取りを決め、Bさんは施設を退所しました。
 娘さん、お孫さんで24時間体制で介護にあたっており、疲労、不安が増している時期もあり、「ご家族が眠っている間に息を引き取っても、それは自然なこと」であることを伝え、その後は楽な気持ちで介護できたとのことでした。最期は娘さん夫婦に見守られ、静かに息を引き取りました。その後訪問した医師、看護師の前で娘さんは「ご苦労様、ありがとう」と拍手を送られました。私たちは大変驚きましたが、頑張ったBさんさんだけではなく、娘さんへの思いも込め拍手でお見送りをさせていただきました。

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 今後も日常の病態管理はもちろん、自宅での看取りなど、いかなる状況にあっても患者さん、家族の視点にたち、安心して自宅で生活できるようサポートしていくことが稜北病院に求められている役割と考えます。
 患者さん一人一人との出会を大切に、その人らしい生活を支えていきたいと思います。

函館稜北病院 訪問診療室  主任 武藤 昌子

投稿者: 道南勤医協 | 登録日: 2013年3月1日

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