健康あらかると サルコペニア(筋減弱症)について

函館稜北病院リハビリ科医長 鎌倉 嘉一郎

 サルコペニア(筋減弱症)のサルコは筋肉、ペニアは喪失を意味するギリシャ語からの造語です。サルコペニアは、進行性・全身性の筋肉量の減少と筋力低下であり、身体機能の低下や生活の質の低下、死などのリスクを伴う症候群です。
2010年、ヨーロッパの栄養学と老年医学に取り組む複数の機関により組織されたサルコペニア・ワーキンググループ(EWGSOP)はサルコペニアの臨床的定義と診断基準の統一見解を発表しました。

 サルコペニアの定義は、①【筋肉量の低下】が存在することが必須であり、それに②【筋力の低下】または③【身体機能の低下】を伴うものとされました(図参照)。

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【筋肉量】はDXA(二重エネルギーX線吸収測定法)で測定されます。CTスキャンやMRIを用いる方法もあります。若年成人の平均値のマイナス2SD(標準偏差値)以下を筋肉量低下と定義しました。

【筋力】は代表値として「握力」が用いられ、男性で30㎏未満、女性で20㎏未満が筋力低下とされました。

【身体機能】は代表値として「歩行速度」が用いられ、1秒間に0.8m以下の歩行速度を身体機能低下と定義しました。EWGSOPにより提唱されたこれらのカットオフ値(基準)は人種や体格により差があり、基準として妥当かどうかはこれから検証されることになります。

例えば握力は日本人の場合男性は25㎏、女性は20㎏をカットオフ値にしたほうが生活機能障害のリスクを評価しやすいとの意見があります。

また、日常生活に支障のない地域住民で歩行速度が0.8m/秒以下の人はほとんどいないのでカットオフ値を1.0m/秒としたほうがよいとの意見もあります。横断歩道の青信号は歩行速度1.0m/秒で渡りきれるように設計されているそうです。短めの青信号で横断歩道を渡りきれないような方は歩行速度0.8m/秒以下の可能性があります。
また若者の歩行速度が1.5~1.6m/秒なので、若い人が横断歩道を渡りきったときに中央まで達しているかどうかも判断材料になります。

 サルコペニアの予防や治療の原則は、原因別に、「加齢」に対してはレジスタンストレーニング(抵抗運動)と栄養、「低活動」には、日常からの高い身体活動レベルや、病気治療における不要な安静による廃用性筋萎縮を避けること、つまり早期離床や早期経口摂取が重要です。「低栄養」は高齢者の入院において見逃されやすく、「疾患」によるサルコペニアは栄養管理とリハビリを病期により適切に実施することが求められます。「リハビリテーション栄養」が鍵となります。

投稿者: 道南勤医協 | 登録日: 2013年3月1日

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