漁業・農業・医療 「TPP問題を考える」シンポジウム開催

 道南勤医協主催により、「TPP問題を考える」シンポジウムが6月2日に函館市亀田福祉センターで開催され、会場を埋め尽くす110名の市民が参加しました。函館稜北病院の及能義広院長をコーディネーターに、TPP参加による私たちの生活への影響について、漁業分野を代表して佐々木信夫氏、農業分野から江上恭司氏、医療分野から道南勤医協の堀口信理事長がパネリストとして発言しました。要旨を紹介します。

漁業の崩壊は、地域社会の崩壊につながります

佐々木 信夫さん
(函館市議会議員・南かやべ漁業協同組合理事)

 TPPによる函館市の影響は、2011年の議会での質問で、道の試算に基づいて市への影響を試算したところ、農業産出額は全体の約59%に相当する約15億6000万円、漁業生産額は全体の約31%となる約66億3000万円、それぞれ減少すると明らかになっています。また漁業者と国の拠出により、燃油価格や配合飼料価格が高騰したときに補填金を交付し、経営の安定を図るセーフティーネットの制度があります。TPPに参加することによりこの制度が使えなくなると、漁師を続けることができなくなり、漁業は崩壊します。

 沿岸漁業は、①国内の水産物需要に沿って、生産され発展してきました。②地域に密着した産業として形成され、地域経済・産業と不可分の関係にあり重要な位置づけとなっています。漁業を中心として造船・機械・漁網など様々な業種が関係しています。③沿岸水域の環境保全の役割を担っています。漁業の崩壊は、地域社会の崩壊につながります。TPPへの参加は国益を守ることだと言っていますが、国益とは国民を守り、国土を保全することです。TPPはデフレ対策どころか更なるデフレ政策です。

 漁師の性格として、良い悪いの反応はすぐにしますが、運動の継続は苦手です。漁師だけでなく、みなさんと連携して運動を強め、TPPに反対していきましょう。

非課税障壁の撤廃で、食の安全が脅かされる

江上 恭司さん
(前せたな町議会議員・元せたな町農業委員)

 内閣官房資料による「TPP参加による農産物の影響試算」では作物の残る率は米が68%、小麦は1%、大麦は21%、てん菜、でん粉原料用の馬鈴薯は0%となっています。畑作は輪作が必要ですが、大麦をつくりかろうじて収入を得ても、次に作るものがありません。てん菜を作っても、馬鈴薯を作っても収入にならず、輪作が組めない状態になります。政府はTPP参加に向け、「人・農地プラン」を推奨し補助金を出すとしていますが、せたな町のほとんどの農家は、「現状維持で頑張っていきたい」としています。「人・農地プラン」で補助金を得て、20ヘクタールの農地を運営しても、オーストラリアの120分の一の農地では到底太刀打ちできません。せたな町では、農家が崩れれば町全体が崩れてしまいます。

 日本では、安全な作物を提供するため、ポストハーベストで収穫後の農薬散布を禁止したり、生産経歴書で農薬使用回数など生産過程を管理していますが、TPPに参加すると非課税障壁になるとして廃止されます。安全な作物が輸入されません。

 TPP参加反対は農家だけの取り組みではなく、町全体の取り組みとしていきたいと思っています。

混合診療によって公的保険が縮小

道南勤労者医療協会 理事長 堀口 信

 米国では、日本の医療と保険市場をどう見ているか。米国研究製薬工業協会日本代表は「外国製薬企業にとって、日本は現時点で世界最大、最良の市場である」、外国貿易障壁報告書2007‐08では「日本の保険市場は米国に次ぐ世界第二位の規模。日本の保険市場では、民間保険会社の他に、郵便局の保険事業部門、公的な健康保険制度、共済のネットワークが存在し、大きなシェアを占めている。米国政府は、日本政府に対し、同分野の市場を開放的で、公平で、競争的なものにする」ことを要求しています。

 TPPと金融・保険分野では、金融ビジネスでは銀行預金は短期性資金、生命保険は長期性資金にあたります。長期性資金の方が、様々なビジネスに運用できて、マネーゲームの資金になります。

 混合診療とは、保険診療と保険外診療を同時に受けられる診療形態です。混合診療が国民全体に不利益をもたらす仕組みは、混合診療によって、保険でみられる医療の範囲が狭まります。公的保険でカバーされる範囲が縮小すると自己負担をカバーする民間保険が拡大します。日本の医療保険は建前上、国民皆保険です。国民皆保険制度は外国の医療保険企業からみると、民間保険医療が参入できず、不平等な非課税障壁になります。結局、TPP参加によって、外国の民間医療保険が利用しやすい混合診療が認められることになります。

 薬価制度はアメリカの制度に合わせられて、患者さんの薬代負担は今の三倍になります。医療への営利企業の参入を認め、外科手術や診断基準がアメリカの特許にあたる場合、医療費が高騰する恐れもあります。

 フロアーからは、「国保加入者を対象に無料で行っている特定健診も、アメリカの保険会社から訴えられるのではないか」「安倍内閣が打ち出した農業所得倍増改革とTPPの関係について知りたい」「ジェネリック医薬品も先発品と同じく価格が引き上げられてしまう」などの質問や意見が出されていました。

 閉会挨拶で、函館稜北病院の佐々木悟副院長が「集会などでTPP問題を学ぶ必要性もありますが、普段の会話でも話題にして問題点を広め、参加撤回を求めていきましょう」と呼びかけました。

投稿者: 道南勤医協 | 登録日: 2013年7月1日

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