健康あらかると 話題の炭水化物制限食の功罪について

医師 内山 清

 いま肥満や糖尿病に糖質(炭水化物)を極端に制限する食事療法が有効であるとする考え方が社会的関心を集めています。今回はこの問題について考えてみましょう。

炭水化物の役割とは

 そもそも炭水化物(糖質)の身体での役割から考えてみましょう。

 糖質は三大栄養素の中でも、最もエネルギー源として効率の良いもので、1gで4kcalのエネルギーを生み出します。一口に糖質といっても種類はいろいろあり、最も簡単で吸収されやすい形が単糖類、単糖類が2個結合したのが二糖類、さらに多くの単糖類が集合したものを多糖類と呼びます。単糖類には、ブドウ糖などがあり果物に多く含まれ、多糖類には、でんぷん(ごはん、パン、麺類、イモ類など)があります。ジュースや甘い菓子類などは、分解する手間が省けるので、体内に吸収されるスピードが速く、血糖値が急激に上昇します。運動にはエネルギー源として効果的補給になりますが、普段からこうしたものを摂りすぎると糖尿病になりやすくなったり、糖尿病が悪化したりします。普段の食事は、でんぷん(多糖類)として摂取していくことが健康のためには大切です。

 余分な糖質は筋肉や肝臓にグリコーゲンとして蓄えられます。糖質は脂肪の燃焼のためにも必要不可欠です。また必要以上に体内に糖質が溢れてくると、中性脂肪に作り替えられ、内臓脂肪や皮下脂肪として体内に蓄えられ、肥満の原因となります。普段から有酸素運動をしていれば、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが取れ、肥満を予防できます。このように糖質を摂りすぎると肥満の原因になりますが、脳や中枢神経、血球などは、ブドウ糖以外からエネルギーを得ることができず、生きていけないので少なすぎてもいけない大切な栄養素です。

短期間では有効な糖質制限食

 確かに食後の血糖値を上げない、体重減量などに糖質制限は効果的であることは間違いありません。近年マスコミや週刊誌、書籍などで紹介されている「糖質制限食」とは食事のうち、ごはん、パン、麺類などの炭水化物をほとんど摂らず、その代り他のものに制限を設けず、好きなものを食べてよいとするダイエット法です。面倒なカロリー計算やバランス食への配慮など考えないで減量がはかれるということで大変魅力的に映ります。

 短期的には効果的に見えるこの方法も、長期的にみるとリバウンドも多く、種々の危険性もはらんでいます。

糖質制限食の問題点

 炭水化物(糖質)を極端に減らし、タンパク質、脂質中心の食事は長期的にみると人体に否定的現象をもたらす可能性があります。炭水化物を制限する食生活を長期間続けると心筋梗塞や脳卒中になる危険性が高まり、全身の動脈硬化症は、高糖質食より低糖質食において悪化するとの報告が多くみられます。低糖質食では、必然的に高タンパク質、高脂質となり、飽和脂肪酸・塩分摂取量が増えることや、炭水化物の制限による食物繊維の不足、ビタミン、ミネラルも不足しやすくなります。またタンパク質の過剰摂取は腎臓に負担をかけ、腎機能の低下にもつながります。

あくまでもバランス食にこだわりましょう

 確かに炭水化物の過剰摂取は肥満や糖尿病を悪化させます。あくまでも摂りすぎている炭水化物の量を是正する。三大栄養素とビタミン・ミネラルのバランスのとれた食生活を考える。このことにつきます。よくかんで食べる、食べる順番(野菜・海草→肉・魚→ごはん・パン)に気をつける。食物繊維をしっかり摂る。

 蛇足ながら、食生活の工夫とともに運動療法は車の両輪として日常生活の中で繰り返し定着させる努力を継続したいものです。一時の流行に流されず、賢く頑張っていきましょう。読者のご健闘を期待します。

投稿者: 道南勤医協 | 登録日: 2013年8月1日

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