健康あらかると サプリメントの規制緩和

函館稜北病院リハビリ科医長 鎌倉 嘉一郎

 内閣府消費者委員会が2012年実施した調査では、一般消費者の約60%が何らかのサプリメントを使い、50歳代以上では約30%がほぼ毎日利用しているという。2012年の市場規模は1兆7000億円に達する。

 アベノミクス第3の矢「民間投資を喚起する成長戦略」の一環として、政府は昨年、サプリメントや健康食品の表示の規制を緩和する方針を打ち出した。これまでは国の審査で有用性が認定された特定保健用食品(トクホ)や栄養機能食品に限り効能や機能表示が認められてきた。食品であるサプリメントは、現在「○○に効果がある」などの表示は認められていないが、一定の根拠があればこうした「機能表示」を認めようというものだ。

【手本はアメリカ】

 アメリカで1994年「栄養補助食品健康・教育法DSHEA:DietarySupplement Health and Education Act」が制定され、サプリメントなどに機能性表示を認める「ダイエタリーサプリメント制度」が創設された。その特徴は、サプリメントの有効性は論文調査などを通じて企業が自ら担保し、第三者機関が審査・許可する必要がないことだ。米食品医薬品局(FDA)への届け出は発売後でよくなった。「薬効表示」はFDAの承認が必要だが「構造機能表示」は承認の必要なく、効能を謳ったサプリメント商品を容易に発売できるようになった。

 アメリカの栄養補助食品市場は毎年2桁台の伸長率で発展した。商品が5000品目が80000品目に拡大し業界全体の売上高が約7倍の3兆5000億円に増大したとされる。

 規制緩和は様々な不具合いを生じた。例えばハーブのエフェドラによる健康被害の問題。エフェドラは滋養強壮・体重減少目的で様々なサプリメントに配合され、当時全米で12万人以上が服用していたが、’94年以降、心臓発作、脳卒中、高血圧など健康被害が相次いだ。エフェドラの副作用事例をFDAが調査、47%に心臓血管、18%に中枢神経異常が認められた。エフェドラに関連して155人が死亡、健康被害の訴えは16000件以上にのぼったとされる。こうした問題からDSHEAが補正され、重篤な副作用の報告義務や製造工程や品質管理基準などの規制が強化された。

【規制緩和のもたらすもの】

 サプリメントの「構造機能表示」が認められると何が変わるのか。「トクホ」は何に効果があるか関与成分がはっきりしており、商品開発に3億円近い初期投資が必要とされる。サプリメントの表示規制緩和により市場参入が容易になり市場が拡大することが期待されている。国内のみならずアメリカをはじめ外国企業も参入を検討しているという。

 「論文などで科学的に裏付けが取れているものを、消費者にしっかり説明したうえで、それを消費者が選択し、自身の健康の維持増進のために役立てていくのが、今回の規制緩和の狙い。」との支持意見がある。サプリメントを予防医療に役立て医療費抑制をはかり、健康ビジネスの拡大による経済成長をとの目論見であるが、本当にそうなるのか?

 食用油で初めて「トクホ」に認定された「花王エコナ」に発がん性物質が含まれていることがわかり販売中止に追い込まれた事件があった。表示規制緩和は、サプリメントによる健康被害の危険性を高くし、国民は自己責任に晒されるだろう。健康増進には、適度の運動とバランスのよい食事、睡眠が基本であり、これらを置き換える魔法のサプリメントはない。

投稿者: 道南勤医協 | 登録日: 2014年7月1日

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