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健康を保つ力 ~“首尾一貫感覚”

医師 佐々木 悟

ストレスと生活習慣
 医者の不養生を地で行ったように、昨年入院治療を余儀なくされ、1カ月仕事を休んでしまった。発症1年経過した現在も治療継続中で、症状もなかなかよくならない。病因は不明とされている病気ではあるが、過剰ストレスと生活習慣が関与しているのは間違いがない。
 なかなか治らないのはストレスからも解放されないし、生活労働スタイルを変えることもできないからであろう。
 患者さん方にはいとも簡単に話してはいるが、生活習慣や労働形態を変えるのには、ものすごくエネルギーがいるし、困難を伴うことなのだ。言うは易し、行うは難し。
 そこで、仕事も生活習慣も変えずに健康を回復すると言う都合のいい話はなかろうかといろいろ調べてみた。

健康を保つ力?
 そこで、突き当たったのが、健康を保つ力(健康保持能力)は“首尾一貫感覚”をもっているかどうかに強く関わると言う考え方だ。これはアメリカの学者であるアントノフスキーがアウシュヴィッツから生還した人たちの健康状態の調査をして到達した結論で、東大の山崎喜比古先生が日本に紹介した。
 財産をすべて奪われ、生命を脅かされ続け、人間の尊厳のすべてをはぎ取られたアウシュヴィッツ生還者の3割ぐらいの人たちがその経験を自分自身の試練として積極的に受けとめ、より健康的に生活していることにアントノフスキーは驚いた。健康を取り戻せなかった人たちとの違いはなにか? アントノフスキーは、健康を取り戻した人たちには共通して“首尾一貫感覚”があると言う結論を引き出した。

“首尾一貫感覚”3つの要素
 アントノフスキーは“首尾一貫感覚”は3要素から成り立つと説明した。第1要素の「把握可能感」は自分に生じる環境刺激(事件、事故)は秩序づけられていて予測と説明が可能なものであると確信できること。第2要素の「処理可能感」は、環境刺激は何らかのかたちで必ず処理できると言う確信をもてること。第3要素の「有意味感」は、環境刺激に心血を注いで積極的に関わって行くことは挑戦するに値する有意義なことであるという確信をもてることだ。

信頼と生き甲斐そして休息
 以上のように説明される“首尾一貫感覚”こそが“健康保持能力=健康を保つ力”であるとの学説だ。首尾一貫感覚は自分と他者で構成される生活世界全体を信頼することを前提に物事にあたると言うことである。この感覚(センス)はどのようにして個々人が獲得していくのかと言う研究が現在、日本でも旺盛にすすめられている。これは過労自殺予防の研究と大いに関わりがあるからだ。

 以上結局、山崎先生の論文の要約になってしまった。今の私が本当に病気を克服するには、自分自身を信頼すること、仲間と家族を信頼すること、そして、今取り組んでいる仕事に生き甲斐を持って臨むこと。これが健康を回復する本当の力となると言うことだろう。
 最後に内科医の立場から追加すると人間はやっぱり生物ですから、いくら首尾一貫感覚があっても充分な休息をとらなければ健康的には生活できません。ゆとりをもって仕事をする事は、健康を保つための基本と考えます。

※首尾一貫感覚の原語は sense of coherenceでSOCと略します。coherence はコヒーレンスと発音し首尾一貫性と直訳されます。

2005年9月 第258号より

投稿者: 道南勤医協 | 登録日: 2006年02月16日 |

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