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褥創の治療

医師 横倉 基
 昔は患者さんに褥創ができると看護師の恥だという意識があったようです。でも、現在は褥創に対して医学的な目が向けられ、医師、看護師、栄養師、リハビリ技師、検査技師など多くのスタッフが関わるチーム医療となっています。

北海道新聞で褥創学会の会長が褥創に関する記事を連載されていました。ご覧になった方も多いと思います。
 稜北病院でも、以前よりチームを作って褥創に取り組んでいます。印象に残る一例を紹介します。
 お尻に骨まで達する6cm大の深い褥創ができた寝たきりの患者さんでした。皮下にはさらに7cmにもおよぶポケット(皮下に広がる創)が出来ていました。しかし、霧吹きでぬるま湯を吹きかける、薄いフィルムを1回/日貼る、という簡単な処置を基本にして約1年以上の期間はかかりましたが、遂には治りました。他院の外科の先生にはこの創は絶対に治らないと言われた創です。
 この間、創に消毒薬やガーゼは使用しませんでした。

ジクジクした液体に、創を治そうとする物質があります
 昔は創を消毒し、ガーゼで覆うことが常識でした。しかし、この常識は褥創の分野では通用しなくなっています。創が治るときにジクジクした薄黄色の液体がでてきます。浸出液といいます(ドロドロした汚い液体の膿とは違います)。実は、この浸出液にこそ創を治そうとする物質があるのです。創が治るためには、血流にのって色々な細胞やサイトカインという生体物質が創面に出てきて、複雑なネットワークを作り、その相互作用のなかで創が治って行くということが分かってきています。周囲の血流の確保と細胞やサイトカインが生きる環境が必要なのです。その生きる環境がジクジクした浸出液がある環境です。消毒薬もガーゼもこれを破壊し、自然治癒力を妨げているのです。創の適度な浸出液保持のために、様々な被覆剤が使われています。医薬品のフィルム類から尿とりパットや食品用のラップなどです。
 しかし間違えてならないのは、被覆剤が創を治すのではなく、創が治るためのジクジクした環境を保持するとういう補助的な役割を果たすに過ぎないということです。食品用のラップの使用に関しては、褥創に携わる医療関係者の間で大きな論争がおきています。褥創学会の偉い先生方の多くは否定的です。しかし、現場ではだんだん広がってきていると思います。私も、粘着性のポリウレタンフィルムで皮膚負けをおこす患者さんに使用しています。また褥創ではないのですが火傷の患者さんに使用したこともありました。

除圧と栄養が必要
 創の局所治療は上記のとおりガーゼや消毒薬を使用せず、創の適度なジクジク環境の保持ということが基本です。しかし、この局所治療以上に大切なのが、除圧と栄養です。自分で寝返りをうてず同じ姿勢を長期間続けていた人に褥創が発生します。このために高機能エアーマットが開発され医療現場や在宅介護に導入されています。また、褥創がある患者さんは通常以上の蛋白や亜鉛が必要であることが分かっています。このために、患者さんが寝たきりの高齢者だからといって栄養に無頓着に褥創の局所治療をいくら頑張っても創はよくなりません。

2006年9月 第270号より

投稿者: 道南勤医協 | 登録日: 2006年09月05日 |

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