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函館でもあったアスベストを含むタルク粉塵公害

医師 畑中恒人

 函館市民の中には、かつて、市内でタルク(滑石)を生産していた工場が、周辺に粉塵をまきちらし大きな公害反対運動に発展したことをご存知の方も少なくないと思います。函館診療所が建設される2年ほど前のことでした。

 その工場の30人ほどの従業員中9名がじん肺に罹患し、そのうち数名が診療所を受診。みんな管理3から4の重症な方で、かつ、肺がんや食道がんなど悪性腫瘍をともなう人が含まれていました。事業所名は銭谷鉱業(所在地 函館市港町2の1)。24時間フル操業で原石を粉砕しタルク(製品)を製造していました。受診した従業員の話では、工場内で食べた弁当にタルクの粉が一面にふりかかっていたといいます。重篤な病状といい工場内の粉塵の量といい、従業員は高濃度ばく露の状態のもとで働いていたことはまちがいありません。
 一方、工場周辺の道路や小学校の校庭、民家の屋根なども真っ白くなるほど降り積もったといわれています。通勤車のフロントガラスも前が見えにくくなるほどでした。
 タルク粉には数%のアスベストが含まれています。医学的にもタルクにより中皮腫や胸膜プラークが発生したという報告が散見されます。
 さて、アスベスト関連疾患(病変)では、肺がん、じん肺、中皮腫、限局性胸膜プラークなどがよく知られています(このうち、肺がんと中皮腫が悪性疾患)。潜伏期間の平均は、限局性胸膜プラークが33年、中皮腫が40年と長く、両者は、肺がんやじん肺とちがって、低濃度ばく露でも発生、年数を経るほど発生頻度が高くなります。

アスベストの体内沈着量が少なくてもその期間が長いほど発生の危険性が高まります。ですから、工場周辺の住民でも発生する可能性があります(近隣ばく露といいます)。このタルク工場の函館における操業期間が昭和37年から12年。現時点で操業開始後45年、操業中止後32年が経過しているので現在30歳前半くらいからの住民が被害の対象者ということになります。

 工場内で発生したタルクの粉塵の相当量が周辺地域にまきちらされ、それを子供を含めた周辺の住民、事業所の勤労者、通勤市民などが毎日のように吸っていたと言っていいでしょう。従って、今後数十年間、タルクの粉塵にばく露したと考えられる市民の健康を守るための適切な対策がとられなければならないでしょう。

2007年5月 第278号

投稿者: 道南勤医協 | 登録日: 2007年05月09日 |

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