« 私の町内会の健康づくり No .10 | 【Library TOP】 | いさりび 2007年8月 第281号より »

GERD(ガード)について

医師 犬童伸行

 皆さんはGERD(ガード)という病気をご存知でしょうか。正確にはgastro-esophageal reflux diseaseで、その頭文字をとったものであり、日本語では胃食道逆流症といいます。なんだか難しそうな病名ですが、吐き気や下痢などと並んでごくありふれた消化器症状の一つである胸焼けを主な症状とする病気です。

 「最近胸焼けがひどくて…」というより「俺、GERDになっちゃって」などというとなんとなくかっこよくはないでしょうか。冗談はさておき、このGERD、近年日本で増えてきています。ある報告によると1970年代に内視鏡受診者の1.6%だったGERDは、1990年代に16.3%と欧米並みの頻度となっています。その原因は様々ですが、高齢化の進行により食道と胃の間の逆流防止機構が破綻すること、ピロリ菌の感染率が下がって胃粘膜の萎縮が減少し胃酸の分泌が高まったこと、また食生活の欧米化に伴い肥満者が多くなったことなどが関係しているようです。

 この GERD、たかが胸焼けといって済まされない理由の一つに食道ガンとの関係があります。食道の内面は扁平上皮で覆われ、従来食道ガンといえば扁平上皮ガンのことでした。ところがGERDの増加に伴って欧米では腺ガンタイプの食道ガンが増えています。日本もいずれ同じ道を辿ることが予想されますので、「たかが胸焼け、されど胸焼け」、お心当たりの方はぜひ内視鏡検査を定期的に受けてください。

 さて、このGERD、実は消化器以外の病気とも関連することがわかってきました。たとえば慢性の咳です。ある調査ではGERD患者100名中48名に再発性の肺炎や喘息を認めました。咳が長引く人で表1や2のような特徴があれば内視鏡検査を受けるべきです。最近では睡眠時無呼吸症候群との関連も指摘されています。また耳鼻科領域では、咽喉等異常感、声がれ、慢性咽頭痛や、子どもでは一部の再発性滲出性中耳炎の原因と目されています。罹患歴の長い糖尿病患者では神経障害などによりGERDの合併率が高いにもかかわらず、典型的なGERD症状が出にくい傾向があり注意が必要です。循環器の領域でも強い胸焼けは狭心痛と紛らわしいことがあり、しっかりした鑑別が必要になります。

 胸焼けを繰り返している方はもちろんのこと、咳が続いていくら薬を飲んでも治らない方、のどの違和感に悩まされている方は、まずは内視鏡検査をお勧めします。また内視鏡がどうしても苦手な方には、「PPIテスト」という方法もあります。PPIは最も強力な胃酸分泌抑制剤であり、これの服用が有効であればGERD関連であり,無効であればGERD以外の病態と推定できます。気になる方はかかりつけ医にご相談ください。

特徴

2007年8月 第281号

投稿者: 道南勤医協 | 登録日: 2007年08月09日 |

▲このページの先頭へ

© 医療法人 道南勤労者医療協会